巨大不明生物の仮説をキャンバスで描いてみる
皆さんはシンゴジラをご覧になられたでしょうか。私は9月19日現在で、7回鑑賞しました。
観るたびに何か発見があるのが面白い、作品です。さて、この映画を鑑賞していて私の中で引っかかったのは、 巨大不明 生物の呼称が示すとおり、このような全く先が読めない不確実性の高い事案に対して、どうやって仮説検証ができるだろうかということでした。
対象は極めてファンタジーですが、リアリティあふれる作品だけに、仮説を立て方を示すには良い素材になるかもしれないと、いつも仕事で使っている 仮説キャンバス で巨大不明生物の撃退のための仮説を立ててみました。
設定は、相模トラフトに潜伏〜再上陸あたりの時期とします。仮説立案者の視点は、巨大不明生物統合対策本部副本部長とします。
なお、一応ネタバレを含みますので、まだ作品をご覧になっていない方は、まずは早々に鑑賞しましょう。
仮説キャンバスのフォーマットはこちら。
課題は何か?
さて、仮説キャンバスでは「顕在課題」から考えをはじめることが多いです。巨大不明生物が蒲田に上陸して、蹂躙した有様から、再上陸時の課題は容易に思いつきます。なによりも「生命の危機 」ですね。
そして、歩いただけで様々な経済損失を生むこともまた自明ですから「財産の消失」。また、後半、立川で記者が話していることを拾うと町は失業者で溢れているはずですから「職を失う」。
ここまでが既に顕在化している課題といえます。仮説キャンバスでは「潜在課題」も想定します。顕在課題と潜在課題は解決のアプローチが異なる場合があるため、分けて考えます。実際の仮説検証においては、この潜在課題が想定できているか、解決可能なのかが、企画に深みをもたらします。
今回は「潜在課題」として、放射能汚染を挙げました。劇中でも、巨大不明生物による放射性物質の半減期がどの程度かが鍵になっていたわけです。
切実な課題を持つ顧客は誰か
続いて、状況の欄を埋めましょう。ここは、他のキャンバスでいう「顧客」にあたります。顧客とすると、デモグラフィック属性をあげたくなりがちなので、仮説キャンバスではあえて「状況」としています。
さて、最も切実に課題を保有する「状況」なのは、巨大不明生物が相模トラフトに潜伏したと思われることから、首都圏湾岸に在住している方々であることが想定されます。「チャネル」も相模湾沿岸としました。
この状況にある方々が取りうる「傾向」としては、関西への移住が考えらます。「傾向」とは「状況」にある場合に発生する思考や行動の偏りを指します。劇中でも、関西の土地が高騰していたようですから、この仮説は確からしいといえます。
「傾向」に反するようなソリューションはなかなか適用しづらく、適用したとしても望むような価値がもたらされないことが多いと考えます。今回の傾向性は、あとで考えるソリューションの適用にはあまり影響がないようです。
課題に対する代替手段
次に、代替手段を考えてみましょう。顕在課題は「生命の危機」「財産の消失」「職を失う」でした。これらを回避するための手段として、避難が考えられます。
ただし、避難とは"住民の生活を根こそぎ奪うもの"であり、代替手段と言えるのか、疑問がつきます。代替手段が立たないというのは、挙げている「課題」が相当切実だといえます。適切なソリューション提供が必要です。
目的とビジョン
だいたい、右側が埋まりました。ここで、本来の目的を見失わないように「目的」と「ビジョン」を掲げておきましょう。
「ビジョン」は、中長期的に顧客に訪れて欲しい状態です。ここでは、巨大不明生物に脅かされない世界としました。また、「目的」は、この仮説を立てている方(巨大不明生物統合対策本部副本部長)のwhyですから、日本国民の安全を確保すること、とします。
「顕在課題」「潜在課題」を解決したら、本当に「ビジョン」で描いている世界が訪れるのか。解決したい課題や提案価値は、「目的」と合致しているのか、キャンバス上の観点間の整合性をチェックします。
提案価値とソリューション
さて、いよいよ、キャンバスの左側を考えていきましょう。まずは「提案価値」です。課題を解決した状態としてどのようなことがあげられるのか。ここでは2つ挙げることにしました。
一つは、巨大不明生物の滅却です。もう一つは、巨大不明生物の活動停止です。現時点では、一つに絞ることができませんでした。二つのシナリオにそって、実現するためのソリューションをそれぞれ考えることにします。
まずは滅却の方ですが、当初タバ作戦での滅却を想定していましたが、結果は残念なものでした。キャンバス上の仮説は既に選択肢として無い仮説として検証済です。棄却済を表すべく、灰色にしておきます。
同様に滅却の手段として、国連が提案した熱核攻撃をあげます。選択肢としてはありですが、選ぶわけにはいきません。
優位性から改めてソリューションを考える
ここで「優位性」に立ち返りましょう。"我が国の最大の力は、現場にあります"。「優位性」として現場力をあげます。この優位性から考えられる、巨大不明生物の活動停止のための実現手段を検討しましょう。
ソリューションのエリアに、ヤシオリ作戦をあげました。実現のためのリソースを細かくあげていきます。実際にはすべてのことをここで記述することはできませんから、ここでは特に重要な要素のみをあげて、キャンバスとは別でソリューションをまとめておく必要があります。朝霞でも詳細に詰める必要がありそうです。
この作戦を執行するにあたってのコストを「収益モデル」に記載します。サービス企画では、どのような売上、利益をあげるのか仮説を立てますが、このテーマにおいては勿論、コストしかありません。補正予算を組みます。
何でもって、モデルの評価を行うか
最後に、このモデルの評価軸を何で行うかを「評価指標」にまとめます。課題にあげている「生命の危機」「財産の消失」をいかに回避するかがこの作戦の狙いですから、それに関する指標とします。
さて、キャンバスは以下のようになりました。
実際には、ここから、各仮説の検証をあらゆる手段をつかって進める必要があります。今回のテーマでは、課題・提供すべき価値は明白であるため、実現が可能なのかというソリューションの検証が重要といえます。
プロトタイプづくりや実験を何度も行う必要があるでしょう。なにしろ、このテーマの本番においては、ちょっと試してみるというのが通じませんから。
テーマが冗談ポイなので、どこまで本気で書いているのかと思われるかもしれませんが、キャンバスの埋め方としてはよくある流れとなっています。ゴールデンサークルで有名なサイモン・シネックのStart with Why(Whyから始めよ)に従い、目的から落とし込むのもありです。今回は、書きませんでしたが、実際には直線状の検討ではなく、キャンバス上のエリアをいったりきたりと仮説立てることになるでしょう。
Photo credit: YEXIU via VisualHunt / CC BY
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