第二回最優秀賞を受賞した『Co-LABO MAKER』が「MVP Award」に応募してから1年が経ちました。今年はいよいよ開発が始まる段階となり、現在ギルドワークスでは要件定義とマネジメント部分をサポートしています。
「MVP Award」への応募のきっかけ~長年思っていた課題とは?
佐々木 -どんなキッカケで応募されたのですか?
Co-LABO MAKER代表 古谷優貴様(以下敬称略 古谷)
ー 最初に「MVP Award」に応募する方は起業しようとして応募する方が多いかもしれませんが、自分としては、起業することよりも、課題に思っていることがあったんです。当時、会社員として会社と家を往復する暮らしでした。そこに一石を投じようと、様々なアイデア投稿サービスに提案していて、それなりに結果を出していました。その過程で仲良くなった友人が『MVP Award』のことを教えてくれたんです。
はじめは応募するためには「プロトタイプ」が無いといけないのではないかとも思ったのですが、ランディングページだけでも良いと知ったので、じゃあ、自分で本当に課題に思っていることで実現したいことを、そのまま出してみようと思い応募しました。
佐々木 ー ご友人と共同での応募でしたね。応募の内容はどんな内容でしたか?
古谷 ー 実験や研究で使う機器をシェアするための「シェアリングプラットフォーム」です。例えば、日本中・世界中の企業や大学の研究施設には、様々な実験機器があるのですが、それが「どこに何かあるのか」全然見えない状態なんです。
実は、実験機器ってけっこう余っているんです。何千万円何億円という機器がほとんど使われない状態で、企業や大学研究室にあるのは非常にもったいない。大学で研究していた時も、企業で研究していた時も常にそう思っていました。そして、他の人がその実験機器を使いたいと思ったとしても、なかなかその情報にたどり着けない。使われずにいる実験機器や技術を活用し、これまでリソースがなくてちゃんと実験できなかったことが、実験できるようになる仕組みを作り、その情報をシェアするというサービスを提案しました。
応募スタートから結果発表まで
佐々木 ー 第2回「MVP Award」のテーマは「社会の課題を解決す技術」でした。
「MVP Award」では課題を解決しようとする点をテーマにしているので、その課題がどれだけインパクトがあるかという点を重視しています。応募時点でプロトタイプが出来ていなかったとしても、応募期間内に作ればいいですし、またランディングページだけで、何かしらの検証ができるデータが取れるのであれば、それでも構わないというのが「MVP Award」の特徴です。
古谷 ー 最初は500文字程度でアイデアの内容を投稿しました。投稿してから応募終了期間まである程度期間があったため、ギルドワークスさんと内容についてかなりキャッチボールができました。追加で仮説キャンバスを作ってそれを元にブラッシュアップし、ブラッシュアップした内容を元に「検証可能な最小限のプロダクト(=MVP)をつくる」という工程でした。
佐々木 ー 応募いただいた方には、このアイデアはここがいい、ここがわからないなど、必ず一言フィードバックをしていました。アイデアだけだと分からないことも多く、ビジネスにおいては相互に絡み合う事柄が多いので、何らかのキャンバスに書いて欲しいとお願いしています。これにはギルドワークスでカスタマイズした「仮説キャンバス」を使用しています。
佐々木 ー 実際に「仮説キャンバス」を書いてみてどうでしたか?
古谷 ー 私は当時「リーン・スタートアップ」の基礎を知らなかったので、何を書いたらよいかという迷いがありました。キャンバスを埋めていく中で、ビジネスにおいて最初の構想をする上で、最低限の項目をキャンバスである程度伝えられるので、ある程度全体像をつかめるという点で良かったと思います。それを少しずつ書き換えて、キャンバスそれだけでコミュニケーションが取れる。課題やソリューションについてのアドバイスを受けられたのが良かったですね。
佐々木 ー ギルドワークスのメンバーでキャンバスを見て、都度フィードバックをしています。古谷さんとは 例えば顧客のセグメント、誰に届けたいのか、その人の抱えてる課題を明確にしてください」とオーダーしました。また、競合サービスとの違いは何か?という点をフィードバックをしました。
仮説キャンバスを更新することを何往復かして、その後、古谷さんにはランディングページを作っていただきました。「ペライチ」でランディングページを作り、ユーザー登録をしてもらえるか?を見て、 PVや登録者などの「数字」で、ある程度の検証を進めていました。
古谷 ー いいね!やコメントを返してくれる方もいました。どれくらいの感触なのかを知るためにアンケートも作成しました。
佐々木 ー第2回は当初60件ほどの応募があり13件ほどが一次審査を通過しました。その13件は、かなり拮抗していたので、締め切り後二次選考として「追加でこんな点は弱いので、検証を追加でしませんか?」と宿題のようなものを返しました。その時に、古谷さんの取ったアンケートの結果を聞いたんです。
古谷 ― 公開したランディングページを大きく広めたのもこの時期です。
佐々木 ー 古谷さんは、こちらから尋ねなくても頻繁に追加情報を上げてくれたので「想い」がある方だなと感じていました。当然、検証がなければアップデートができないので、情報をもらえたというのもプラスに働いたと思います。
この期間、まだ受賞も決まってない時期でしたが、確か『月刊事業構想』に載っちゃいましたよね。
古谷 ー『月刊事業構想』に載ってから、ベンチャーキャピタルから連絡が来たり、かなり反応が多く驚きました。公開しているランディングページをみて、記事化されたようですが。
佐々木 ― 厳密には分けて考えたいところですが、ユーザー候補の仮説検証も大事な一方、ビジネスを進めるという点においては、どれだけの人が投資してくれそうかという検証も大事ですね。Awardが終わった後に、こんな人から投資の話が来たんですけど…と古谷さんから連絡がありました。アイデアに対して投資してくれそうな人がいそうだという事を掴めたのは、大きなプラスになったのではないでしょうか。
全応募数60件から一旦13件まで絞りこみ、最終選考に残った5件が東京でのプレゼンとなりました。10分のプレゼンと質疑応答5分での発表でしたが、ソフトバンクグループの方々とともに審査を実施し、最終的に『Co-LABO MAKER』が最優秀賞を受賞しました。
最優秀賞受賞で感じたこと
古谷 ー 実は、過去のアイデア投稿でもプレゼンまで行くことは多かったんです。「MVP Award」でも、頑張れば最終選考までは行くだろうとは思っていましたが、まさか最優秀賞を獲れるとは思っていませんでした。
佐々木 ー 私なりの感想ですが、やはり検証が進んでいたという点が大きかったと思います。ギルドワークスでは仮説検証を大切にしているのですが、課題の有無やそれに対する検証、特に「課題がありそうだ」と見えていたことは重要だと思います。また、このアイデアを面白いと言ってくれる「事業的な目線」としての検証が進んでいたのも、受賞理由だったように思います。
受賞後に大きく変わったことは?
佐々木 ー 『Co-LABO MAKER』として、すぐには起業はしなかったんですよね。
古谷 ー はい、起業前提で応募したわけではなかったんです。ただ、検証されていくうちに、課題は明確にあることを知り、また解決して欲しいという期待も感じました。アイデアのまま放っておいては先に進まないとも思いました。なんとか実現できる道をさがしたいと思いました。
この頃は、総合化学メーカーで研究開発を仕事していました。仕事は好きですし家族もいるので、それを続けるという道もあったのですが、家族が納得してくれる形で実現可能な方法はないかと考えていました。
面白そうだと言ってくれる人に話を聞きに行ったり、大学の設備を開放したいという声もあったので具体的な話を聞きに行ったりしていました。研究の領域でビジネスを行っている人にも会いに行きました。
会社にいながら実現するというのをまず考えましたがそれはダメでした。また、出資してもらって進めるという道もありそうでしたが、全体を考えると決め手に欠けていました。そうして道を探していくうちに、大学時代の研究室の恩師で自らベンチャーを立ち上げた方から「大学で設備開放の動きを推進してほしい」という要望をいただき、会社を辞める決心をして仙台で起業しました。
佐々木 ー 私は仙台でリモートで仕事してますが、古谷さんが「こっちに戻ってくる!」という感覚でいましたね。
古谷 ー 仙台には親戚もいますので、家族のことを考えると良かったかな…と。
佐々木 ー 応募の段階で「研究室のシェアって母校でやってたな」と思ってましたが、古谷さんから「そうそう、そこです!」っていう返事でしたよね。世界的にも知られている大学で研究設備開放のことも注目されています。東北大学は、創立当初から「門戸開放」「実学主義」を理念としていますからね。
『研究』と「MVP Award」の共通点
佐々木 ー 「MVP Award」は、個人での応募もありましたし、既に起業していた応募者もいました。アイデアに思い入れがあって「絶対当たる!」と思っている人はいるのですが、いずれにせよ仮説検証をしたほうが良いと思っても、それをしないと立ち消えになってしまいます。
古谷さんは学生時代から研究畑だったので、仮説検証を常にやってきたという点も「MVP Award」の趣旨に合ってたんでしょうね。
古谷 ― 確かに、研究者は「MVP Award」に向いてます。研究開発でも「MVP Award」でも、ただアイデアを出すだけで終わりではなく、目的に対して仮説を立てて実際に検証し、新しく対策を練ってまた仮説を立てて…となります。プロセスがすごく似ているんです。
私は研究開発のプロセスが好きで、新しい価値を作るということが好きなんです。これまでなかったことを試して、それを形にするというは、研究でも事業でも似通っていると感じています。似たようなことを変換するのも得意なので、うまいこと行ったのかなと思います。
佐々木 ー ギルドワークスは年間100件ほど、何らかの仮説検証を行ってます。
一般的に、人生において新規事業を立ち上げるといっても2、3件あるかないかですが、 それを傍で数多くみてるので、事業として失敗しそうな点もなんとなく見えてきます。
「MVP Award」後は、ギルドワークスが事業をするわけではなく、当然本人のモチベーションがないと進みません。例えば途中で返信がなくなったり、キャンバスを更新しなくなったりなど本人が諦めてしまったら止まってしまいます。自分からどんどん進めていこうという気持ちがないと、受賞は難しいかと思います。
古谷 ー 自分事の思いを持っているかどうか‥というのは大事だと思います。
今どうしてる?仕事も家族も大事にする”三足のわらじ”
古谷 ー まずは『Co-LABO MAKER』を成長させようというのが一番の思いです。他に、恩師が立ち上げたベンチャーで「主任研究員」として仕事をし、社会人博士課程1年生としての学生の顔もあります。ベンチャーの仕事と勉強では、内容が被っているところもあるので、Dr.も取得してしまおうかと。
そして、小さな子供達のパパでもあるので、家族との時間は大事にしていきたいですね。前よりは家族との時間も減ってしまって申し訳ないと思ってますが…週に一日はしっかり休んで家族と過ごすようにしてます。家族がいるからこそ、安易にどこかお金を出してくれる会社に飛び込むというのではなく、全部がよい形で動けるようにというのが一つの目標でした。
佐々木 ー 起業した会社だけで生活していこうとすると、資金調達の額も大きくしないといけない。サイドビジネスとして自分の事業を始めて、グロースできそうな見立てがあってから、独り立ちという進み方はよくあるケースです。古谷さんの”三足のわらじ”は、とても忙しいとは思いますが、こういう選択肢もありだと思いますよ。
『Co-LABO MAKER』の今後について
古谷 ー 2017年4月に会社として『Co-LABO MAKER』を設立しました。
社員としては1名ですが、サポートしているメンバーを含めると5~6人で事業を進めています。
佐々木 ー 今後の展開をお聞かせください。
古谷 ー 資金を提供したいというお話もありますので、早くサービスが回るように進めたいですね。もっとスピード感があってもいいかなとは思いますが、着実に進んでいることは実感しています。
Webサービスが完成すればどんどん広めていきたいですし、その時には費用も人員も必要になります。今は、資金を調達しつつ、サービスを動かせるよう検証をして、徐々にサービスを広めていこうというところに来ています。
MVP Award 応募者への一言
古谷 ー「MVP Award」最優秀賞受賞が大きな弾みとなり、他のアクセラレータープログラムにも挑戦できてます。ギルドワークスとの仮説検証の経験は、こういった場面でも大いに役立っていると感じています。起業しようと準備を進めている方も、まだ何もない方もチャンスはあるので是非挑戦していきましょう!
佐々木 ー 「MVP Award」は何らかの検証を終えているというのが、応募締切時点の条件です。何か一つでも仮説検証が終わっている状態ということなので、プロトタイプのプロダクトでも、ランディングページでも構いません。価値を検証できる「何か」ができていればOKです。
古谷さんの Co-LABO MAKER が立ち上がるキッカケとなった「MVP Award」は、7月31日まで応募を受け付けています。是非ご応募ください。
ギルドワークスでは、価値探索として新規事業の立ち上げを様々な形で支援しています。お気軽にご相談ください。
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